目次
救急外来の現状
平成29年(2017年)の厚生労働省の調査によると、全国には8412の病院(病床を20床以上持つ施設)があり、そのうち4840の病院(57.5%)で何らかの形で救急医療を行っています※1。
救急医療には1次~3次まであり、多くの病院は「1次救急外来(基本的に入院を要しない軽傷の患者)」と「2次救急外来(入院用要する救急患者)」で夜間休日の救急患者を受け入れています。3次救急は救命救急センターとも言われ、複数の救急専門医がチームを組んで最重症患者の治療にあたっています。
ところで、1次救急、2次救急を担っているこれらの救急病院のうち、自施設の医師だけで救急外来をまかなえている病院はどの程度あるでしょうか。具体的な統計調査はなされていないようですが、おそらく研修医が在籍しない病院(つまり臨床研修指定病院ではない病院)では医師の高齢化やそれに伴う医師不足のため、いわゆるアルバイト医で救急外来がまかなわれています。
その結果、二次救急医療機関の当番日(地域の救急受け入れ指定当番の病院)でも約70%の病院で1人の医師で救急を担当することになっています※2。
入院患者を持つ病院では必ず医師が院内に常駐するという規定があり、また救急医療体制を保つために都道府県から多額の補助金が出ている場合がありますので、アルバイト医を雇ってでも救急外来を継続している病院が多数あるようです。そのために、非常勤やスポットという形式で、夜間・休日の救急外来アルバイトが数多く募集されています。
想像以上に安い給料
医学部を卒業して医師免許を授与されると、晴れて医師と名乗ることが出来ます。平成16年(2004年)から臨床研修医制度がスタートし、卒業後2年間は研修医として国の定めた初期臨床研修を終了しなければならなくなりました。
初期臨床研修中は研修に専念するためにアルバイトが禁止されたため、その代わりに月給30万円程度が補償されるようになりました※3。2003年までは研修医は見習いと見なされていたためほぼ無給で労働をしており、その代わりアルバイトで生活費を稼がなければなりませんでした。
初期臨床研修終了後、専門科に進むための後期臨床研修(いわゆるレジデント)が始まります。レジデントは大学病院や国立病院などでそれぞれの専門分野の研修が始まります。レジデント期間中の給与は病院によって大きく差があり、特に大学病院では研修医時代より給料が下がると言われています。
なぜなら、多くの大学病院勤務医は「非常勤」だからです。様々な手当は「常勤」にならないとつきません。そもそも大学病院の給与自体がかなりひくいため、30代になっても年収300万円台という医師は数多くいます。
給料だけで考えると市中病院の方が良いですが、医師として得られる専門的な経験や知識は大学に一日の長があるため、薄給を覚悟で大学病院へ就職していきます。そこで生活費を稼ぐ手段として、救急外来でのアルバイトなどに従事する事になります。
一方、独立行政法人(立場は国家公務員)の病院に勤務する場合、非常勤ではあるものの給与は国家公務員の給与体系で規定されます。厚生労働省によると、28歳以上32歳未満では約67万円、36歳以上40歳未満では約76万円となります。国立病院であっても非常勤職員であればアルバイトが許可されていますので、救急外来でのアルバイトなどに従事する事もあります。
アルバイトの間に大学で勤務する!
ある大学の救急部に所属する筆者の知人は、週の4日を連携施設の救急病院で2次救急外来を担当し、大学では週1日程度しか勤務していないと話していました。
大学病院や規模の大きい市中病院で入院・治療を受ければ大丈夫と安心されるかもしれませんが、担当医はほとんど病院に不在で、アルバイトの合間に診療をしているかもしれません。
もちろんチームで診療しているので大丈夫と言われるでしょうが、大学病院に就職した医師はそれでよいのでしょうか。
想像以上に危険な救急外来
これまでお伝えしたように、初期臨床研修が終わったばかり、つまり医師免許取得後3年目から、多くの医師が救急外来のアルバイトに出ます。
夜間の救急外来は人手不足のため、大学病院や臨床研修指定病院とは異なり、一人で全て対応しなければなりません。
当然、自分の専門領域ではない疾患の患者も搬送されますが、万が一生命に関わる病気を見逃してしまった場合、専門外であったからと言っても許されない風潮になっています。
救急外来アルバイトの決め方
それでも救急外来のアルバイトを行う方に向け、アルバイトの選び方をお伝えします。
救急外来のアルバイトに限らず、医師のアルバイトには勤務形態に応じて案件を選ばなければなりません。
まず雇用形態が定期非常勤勤務かスポット勤務か、そして勤務時間が日中・夜間・土日祝日かといった条件を組み合わせ、アルバイト案件を選びます。
- 勤務形態:定期非常勤勤務・スポット勤務
- 勤務時間:日中・夜間・土日祝日
雇用形態で給与相場が変動する事はありませんが、雇用側からすれば、決まった曜日に来てもらえる医師を採用したいため、定期非常勤案件の方が数が多く見つけやすくなっています。
また、固定枠のため医師側も安定収入を望めるため、お互いにとってメリットがあります。
一方スポット勤務のメリットは、何といっても応募のしやすさです。
案件さえあれば、最短当日にそのまま勤務できますので、急に予定が空いたという理由でも応募できます。
多くの症例と給与を得られる救急外来アルバイト
アルバイトのメリットは大きく「多くの症例を経験できる」と「給与」の2点になります。
アルバイトの給与は勤務時間帯に応じて変動します。
夜間や土日祝日の救急外来アルバイトは比較的高めの給与に設定されており、例えば救急車を年間数千台を受け入れいているような救急病院では、1日10万円以上と設定されていることもあります。
救急外来で働くことのメリットは給与以外にも、色々な症例を経験出来ることにあります。特に内科系診療科を専門科として選択する場合、救急外来で経験するいわゆる”common disease”に多く触れることにより、自身の成長にもつながるでしょう。
その反面、特定の疾患だけ選択して診察することはできないため、救急外来アルバイトをする前に、可能な限り幅広い分野の知識と経験を得ておくことが重要です。
当然ながら、他医師に相談する事はできません。一人ですべて解決しなければならないという事は忘れないでください。
救急外来のアルバイトを見つける方法
比較的高給を得られる民間病院に就職していれば、それほどアルバイトに精を出さなくとも、それなりの年収を得られるでしょう。土日の時間も有効に使えるようになります。
アルバイトはそもそも、大学病院や国立病院に所属する薄給医師のためにあるようなものです。
それでもアルバイトを使用と考えられている方は、以下の内容を是非参考にしてください。
アルバイトの案件は、
- 各大学病院(各医局単位)がもともと受け持っている案件
- 先輩からの紹介や個人的なコネクション
- 医師アルバイト求人案件サイト
の3通りで見つけることが殆どです。
①病院単位(医局単位)で保有する案件の場合
大学医局に所属していてアルバイトを行う場合であれば、各医局が昔より持っている案件が数多くあり、上司から斡旋してもらえることが殆どです。
特に大学院生は無給医ですので、アルバイトの収入で生計を立てなければなりません。
そのため、日中はアルバイトに行き、夜から研究という生活スタイルとなります。
ただ、斡旋会社の案件よりも給与面を含めた条件は良い一方、アルバイト先でトラブルを起こしたりすると医局にそのまま迷惑がかかりますので、勤務態度は気を付けましょう。
②先輩からの紹介や個人的なコネクション
これは大学病院に所属する場合と、それ以外の施設に所属する医師両方にあてはまります。
先輩からの紹介や個人的なつてでアルバイトを頼まれることは往々にしてあります。
条件もそれほど悪くない場合がありますが、自身で交渉しなければならない場合もあります。
また、万が一辞めなければならない場合は、後任を探してから辞めるように言われるなど、意外に苦労が多いようです。
救急外来のバイトにおすすめの求人サイト
救急外来のバイトにおすすめなのが医師バイトドットコムです。
医師バイトドットコムの訪問診療の求人数は、スポットバイト3000件と国内No.1です。
医師バイトドットコムなら、医師の先生の希望や状況を丁寧にヒアリングした上で、よりマッチした求人を提案してくれます。
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参考・引用文献
※1 厚生労働省ホームページ 平成 29 年(2017) 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況
※2 厚生労働省ホームページ 救命救急センター及び二次救急医療機関の現状
※3 厚生労働省ホームページ 臨床研修病院における研修医の処遇
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